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正統性、透明性、説明責任の確立を目指して

 2009年9月20日(日)から22日(火)の3日間、2009年度AGNA年次会議が南アフリカ共和国ヨハネスブルクで開催されました。日本からは公益財団法人公益法人協会の白石調査部員がこれに参加し、本会議のメインテーマである「Legitimacy(正統性)、Transparency(透明性)、Accountability(説明責任)」について
各国の代表者らと活発にディスカッションを行いました。その概要を報告いたします。


<2009年度AGNA年次会議から>

 

公益財団法人 公益法人協会
調査部 白石喜春

1 はじめに

 2009年9月20日から22日の3日間、2009年度AGNA年次会議が南アフリカ共和国ヨハネスブルクで開催され、30カ国からの参加者が集まった。公益法人協会からは調査部白石がこれに参加し、本会議のメインテーマである「Legitimacy(正統性)、Transparency(透明性)、Accountability(説明責任)」(以下LTAと記述)について各国の参加者らと活発にディスカッションを行った。AGNA(The Affinity Group of National Association)は各国の中間支援団体を会員とし、世界の市民社会の強化を目指す国際的な市民社会組織「CIVICUS」の一部門であり、世界各国の中間支援団体が抱える諸問題の対応を図ることを目的に設立されたものである。

 会議のプログラムは、後掲のとおりであり、その概要を報告する。

 

会議プログラム
〔9月20日〕
◇オープニング(Katsuji Imata/CIVICUS事務局次長)
◇ウェルカム・スピーチ(Anabel Cruz/CIVICUS理事長)
◇参加者の自己紹介
◇CIVICUSの活動:成果とチャレンジ(Ingrid Srinath/CIVICUS事務局長)
◇国際的な金融危機と市民社会(グループ・ディスカッション)
◇UNDPの活動報告:市民社会との関係構築の強化(Anna Boelens/UNDP市民社会担当官)
◇市民社会における地方・国レベルの課題(グループ・ディスカッション)
◇AGNAリジョナル会議の設置について(グループ・ディスカッション)
〔9月21日〕
◇LTAの概念について(グループ・ディスカッション)
◇LTA:我々の責任と文化(Kristina Mand/エストニア非営利団体ネットワーク)
◇LTAのための実用的なプログラム、方法、資金源(Kristina Mand/エストニア非営利団体ネットワーク)
◇参加型LTAの確立(グループ・ディスカッション)
◇プレゼンテーション:ナショナル・アソシエーションにおけるLTA

                      (Anna Mazgal/ポーランドNGO連合)
                      (Liz Atkins/英国ボランタリー組織協議会)
                      (Kebba Barrow/ガンビアNGO同盟)
                      (Siaka Coulibaly/ブルキナファソ)
                      (Anna Bettoni/ウルグアイNGO連合)
                      (Addy Marte/ドミニカNGO同盟)
◇ナショナル・アソシエーションにおけるLTA(グループ・ディスカッション)
〔6月22日〕
◇ウェルカム・スピーチ       (Pat Hanley/ニュージーランド市民社会政策研究所)
                      (Ingrid Srinath/CIVICUS事務局長)
                      (Anabel Cruz/CIVICUS理事長)
◇CIVICUS事業報告
◇AGNAが抱えている問題の解決に向けて(Henri Valot/CIVICUS政策担当官)
◇AGNAリジョナル会議の報告
◇委員選定
◇メンバー間の協力体制(グループ・ディスカッション)
◇AGNA事業計画の報告
◇閉会の挨拶(Pat Hanley/ニュージーランド市民社会政策研究所)

 

2 事務局長挨拶 

 はじめに、2008年に開催された第8回CIVICUS年次大会でCIVICUS事務局長に就任したIngrid Srinath氏より、AGNAメンバーに対して次のとおりウェルカムスピーチがあった。

 「AGNAは、世界各国の中間支援団体が抱える諸問題の対応を検討する、いわゆる中間支援団体のハブ的な役割を果たす国際的な機関である。1国1団体の会員制を導入しており、現在58カ国(アジア12、パシフィック9、ヨーロッパ11、南北アメリカ10、アフリカ16)の代表的な中間支援団体が会員登録されている。

 現在は金融危機の中にあり、市民社会組織が生き抜いていくための手段を検討することは重要であるが、金融危機はエネルギー資源の問題、食糧危機、環境問題などにも波及し、国際情勢がめまぐるしく変化しており、市民社会は即座の対応に迫られている。これらの問題を解決させるための措置としては、LTAの向上を図ることが望ましい。つまり、現在はLTAについて見直すよい機会であり、このことからも、会議日程の多くの時間をLTAに充て、メンバー同士で情報を共有することで問題解決への道筋を示していきたい。」

 

3 金融危機が市民社会に与える影響

 このテーマでは、まず最初に「国際的な金融危機と市民社会」と題してHenri Valot氏(CIVICUS)がスピーチを行い、金融危機の影響は市民社会組織(以下CSOと記述)の活動資金に出始めており、この問題の解決策の検討が急がれるとした上で、組織自体の強化を図るよい機会であると指摘した。その後のグループ・ディスカッションでは各国から報告があり、アフガニスタンの代表者からは、資金難から設備投資が困難となっており、市民社会組織の活動は停滞傾向にあることが説明された。ベトナムの代表者は、日本のODAからの活動資金が大幅にカットされたことによる影響があると述べた。また、キルギス共和国は、ロシアからの影響が大きく防衛体制の確立が最重要課題であったが、最近ロシアと協定を結んだことから安定し、市民社会活動も緩やかに上昇傾向にあるとのこと。 概して、多くの国々では金融危機が市民社会の活動に大きな影響を与えていることが確認された。

 筆者からは、日本においてもバブルが崩壊した1992年から続いている長期的な経済不況に加え、今回の金融危機の影響がCSO界に顕在化してきていると説明。同時に、今の時期だからこそ、この機会にしっかりしたガバナンスの確立とLegitimacyの向上を図り、組織や活動内容を見直すというプラス思考で物事を捉える団体も増えている。そして、日本サードセクター経営者協会や日本ファンドレイジング協会の設立も、市民社会組織の能力向上を図ろうとする動きの一環として誕生したことを伝えた。さらに、寄附金や補助金等が積極的に提供されるように国際的なレベルでファイナンシャルおよび税制を改善していくことが必要であることを伝えた。なお、米国の代表者からも、国外への寄附が難しく、ファイナンシャル・システムの見直しが検討されているとの発言があった。



Legitimacyの概念を説明する筆者

 

4 AGNAリージョナル会議

 今回AGNAにリージョナル(Regional)会議が設置され、初回のアジア・リージョナル会議が開催された。リージョナル会議は、文化・社会構造が類似している地域ごとに、各種問題や課題などについて協議することが意見を取りまとめるには望ましいとの理由から設置されたものである。アジア・リージョナル会議では各国の代表者が集まり、この会議に期待すること、および今後の運営方法などについて話し合った。 筆者からは、リージョナル会議は世界基準の策定を図るためのファースト・ステップとしての機能を兼ね備えた機関でなければならないと主張し、また、Dala Rawal氏 (A National Federation on NGOs in Nepal)からは、CIVICUSは国際レベルの中間支援組織であることから、調査研究を通して国際基準を確立させて世界各国で提言活動を行うべきであるとの発言があった。

 運営方針としては、アジア・リージョナル会議のメンバーは随時インターネットを通じて情報共有し、年1回のピア・ラーニングを行うことを確認した。なお、次回のアジア・リージョナル会議のテーマや開催国についても議論されたが、今回の会議では結論が出なかった。

 

5 正統性、透明性、説明責任(LTA)について

 LTAをテーマとした会議は、第2日目から本格的に行われ、最初のグループ・ディスカッションの中で筆者は、行政への提言活動、セクターの取りまとめ、基準やポリシーの策定等を実現させるためにはLegitimacyが必要で、そのLegitimacyの向上は信用を得ることで自然に身につくものである、と指摘した。その後、Pat Hanley氏(Social and Civil Policy Institute, New Zealand)はスピーチの中で、CSOはオーナー、受益者、一般市民といったステークホルダーに対していかに信頼を得られているかでLegitimacyを示すことができると説明した。

 また、Kristina Mand氏(CIVICUS)は、LTAについて次のとおり指摘した。 「LTAはその団体の文化であり、モデルを策定して中間支援団体がモデルの採用を促がせばよいものではない。しかしながら、中間支援団体がCSO団体に対して道を示し、LTAの向上を図るようアドバイスを行うのは中間支援団体の重要な役割である。LTAの向上を図るにあたっては、LTAについてポジティブに考えていくことが重要である。例えば、LTA対策は技術的にもコスト的にも難しく、手続きが面倒であるとか、LTAについて否定的に捉えると、LTAの向上は図られないことになる。むしろLTAを肯定的に捉えたり、ミッション、戦略、活動、組織運営を通してLTAを考えたり、自身やスタッフがLTAの文化やプロセスについて関心を抱くようにすることで自然とLTAは向上していくものである。」 次のグループ・ディスカッションでは、CSOの世界ではLTAの視点から何が要求されているのか、という問題についても話し合われ、CSOの価値、活動範囲、資金と政治資源へのアクセス、社会的公正の確保、などが挙げられた。また、組織運営を成功させるためには、Trust(信頼性)、Security(安全性)、Knowledge(知識)、Reasonable habits(合理化)並びにCommon sense(常識)が重要であると結論付けられた。

 また、団体活動を支えていく上で、戦略的な視点からみたLTAの活用も必要となる。LTAを戦略的に捉えるための方策としては、全体像の把握、ビジョンを持つ、自己評価する、目標を定める、戦術を選択する、戦略的な視点をもつ、変化を認識する、循環的に考える、ということであると結論付けた。

 さらにグループ・ディスカッションでは、Legitimacyを向上させるための手段について話し合われ、組織の存在意義を高める、組織の活動と影響が法律により守られる、組織や活動内容が正当かつ適切であると外部から認められる、という課題をクリアすることが重要であると確認された。

 

6 おわりに

 本稿で報告した内容は会議のわずか一部であるが、議論された内容は極めて深いものであった。とりわけ公益法人の周辺を取り巻く環境は縦割り構造となっており、ステークホルダーと密接に関わるという機会が少ないと思われることから、Legitimacyを意識した組織運営が今後求められてくるのではないかと思う。この意味から、世界的な視点からみたLTAについて様々な情報を共有することができたことは、非常に大きな収穫であったといえる。

 今後もアジア・リージョナル会議のメンバーや、その他AGNAのメンバーと積極的に情報を共有し、議論を重ねて国内外の市民社会組織の活動が活発になるよう調査研究に取り組んでいきたい。


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