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『地域に飛び出す公務員ネットワーク』 〜公務員が変われば、日本が変わる!〜

 「公務員参加型NPO」として、国・地方を問わず全国の公務員を結ぶ『地域に飛び出す公務員ネットワーク』の動きが広がっています。公務員を対象としたこの活動は、平成20年10月にスタートして以来、700人規模にまで拡大し、新たなNPOの形として注目されます。この活動について、内閣府行政刷新会議事務局参事官補佐の重徳和彦さんよりご紹介いただきました。


内閣府行政刷新会議事務局 参事官補佐
     重徳 和彦

 

 公務員は、役所で公共的な仕事をしていますが、公共への関わり方はそれだけではないはずです。NPOやボランティア、PTA、町内会、おやじの会・・・どんな活動でもいいから、公務員もアフターファイブや休日には、仕事外の活動に参画し、地域おこしや社会貢献をどんどんやろうじゃないか!
 こんな想いを持つ全国の国・地方の公務員が、所属や役職を問わず参加しているのが『地域に飛び出す公務員ネットワーク』(以下『飛び出すネット』)です。
 公務員としてでなく“一住民として”活動することを通じて感じる、現場での気づき、行政の仕事のしかた、官民関係のあり方などについて、日々メーリングリストで議論しています。時には各地でオフ会(飲み会)が開催されます。
 平成20年10月にスタートしたこのネットワークは、今年8月時点で700人規模になり、1万人(目安)を目指して口コミで日々増殖中です。
 このネットワークの運営に携わりながら、私は以下のようなことを考えています。


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(1)“1億総当事者”の社会を目指し、公務員がその第一歩を踏み出す
 公務員は、自分たちのことを「官であって民でない」と思うあまり、実は「官(役所で働く人)である以前に民(一住民)である」ことになかなか気がつきません。
 公務員自身がそう思っているだけでなく、世の中の人もみんな「あの人はお役所の人」(だから民間感覚が乏しく融通が利かないとか、税金でメシ食ってるんだから住民の言うことは何でも聞くべきとか)とステレオタイプで見がちです。
 ちなみに、職業や肩書で自他をはっきり区別する傾向は、社会全体に広がっており、この結果、「ゴミを拾うのは誰か他の人の仕事」「介護や子育ては自分の役割ではない」など、“他人事”、“他人任せ”が蔓延しているように思います。
 本来は、すべての人が、地域社会の中でそれぞれ少しずつ役割や出番をもつ“当事者”であり、公共的な問題があれば他人任せにせず、みんなで解決するのが健全な姿のはずです。
 ところで、公務員の職場を見ると、2〜3年ごとに異動があり、それまでと全く異なる分野の仕事に移ることも多いです。組織人である以上、ある程度やむを得ないところです。
 しかし問題は、あまりに頻繁な異動により、個々の公務員は“これをしたい”という想いや使命感よりも、その場その場の仕事をそつなくこなすことが第一義になってしまいがちということです。このため、既存秩序や前例を優先してしまい、法制度の壁、タテ割りの壁、組織の論理を乗り越えられず、「できないルールになっている」「それは自分の仕事ではない」など、住民や現場の感覚からすると、到底納得できない状況に至ることも少なくありません。
 つまり、公務員の“当事者”意識も、構造的な原因により欠如しがちということです。
 本来、公務員は、地域で起こっている問題について、住民との対話を重ね、制度や組織の壁をいかに乗り越えていくべきかを一緒に考える姿勢が期待されるのですが、組織人として、セクショナリズムの感覚だけで仕事をしている限り、なかなか乗り越えられないのが実情です。
 そうなると、公務員は何のために、誰のために仕事をしているのか、根本からミッションを再認識する努力をすべきということになります。
 職場を離れ、地域に飛び出し、所属や役職にとらわれず、異動があろうとなかろうと、継続的に地域活動に関わり、地域住民との人間関係を築いていく中で、“官の事情による官”という感覚を脱し、“民のための官”“民とともに歩む官”という感覚を体得するのです。
 現に、『飛び出すネット』での議論のやりとりでは、伝統文化や食による地域活性化から、農業活性化、コミュニティ問題、高齢者福祉、虐待問題、地域自治ルールづくり、危機管理、そして「新しい公共」といった分野について、地域それぞれの実情や、住民・民間事業者との関係、行政側の問題点に具体的に言及しながら、まさに“当事者”として、縦横無尽に動こうとウズウズしている全国各地の公務員の躍動感や深い悩みを共有する場となっています。
 ひとたび地域に飛び出し、住民としての視点を持つと、公務員だって“他人任せ”ではいられなくなるのです。その分悩みも深くなるのですが。
 まず公務員が、そしてひいてはすべての国民が、地域で各々の役割を果たす“1億総当事者”の社会へ向かっていけば、日本がいま抱える多くの問題は解決されていくのではないでしょうか。

 

(2)“官民融合”でNPOがパワーアップ
 私はこれまで転勤先の青森や広島でNPOの立ち上げや運営に関わってきた経験から、NPO組織に公務員が加わる「公務員参加型NPO」の意義の大きさを感じています。
 なぜなら、公務員がひとたび行政組織を離れ、NPOという器で活動するとき、日頃の職場でのタテ割りの立場を超え、行政の仕事で得られた知識経験、視野、調整力、事務処理力といった優れた能力を存分に発揮できるケースが多いからです。
 ところで、いま、行政の最大の課題の一つは行革・財政再建であり、これまで行政が直接サービス提供してきたことも、NPOや自治会などが実施主体となることを念頭に、「住民ができることは住民自身が行うべき」という理由で廃止されることも少なくありません。
 そのロジック自体は否定しませんが、問題は「NPOや自治会など」って、一体誰が担うのだろうかということです。行政がほっとけば、どこかの“善良なる住民”が勝手にどんどんやってくれるものなのでしょうか?
 こんなことを役所のイスに座ったまま、誰かに期待していても仕方がありません。
現状では、NPOにはまだまだ専従スタッフは少なく、商売の傍ら働いてるケースも多いのですから、もともと仕事が公共的でありかつ安定している公務員は、本来有力なNPO人材のはずです。
 こんなことを言うと、「気の利かない公務員なんかがNPOに来てもかえって迷惑」と言われるかもしれませんが、これはまあニワトリと卵の議論です。若くて柔軟な公務員は、NPOでも十分役立つ人も多いはずですし、公務員が、NPOの現場や運営の実情を知り、豊かな公共社会をつくるための主体や手法は多様であることを学べば、行政の質も高まります。
 地域社会の崩壊や活力低下は喫緊の課題であり、公共の担い手に官民の区別をしているゆとりはありません。官と民が組織面でも人材面でももっと融合し、一体となって事に当たる“官民融合”が必要なのです。(官民癒着ではありません。)
 そして、いずれ公務員だけでなく、大企業や団体のサラリーマンなどもNPOに関わるのが当然という社会にしたいものです。
 何でも行政にお任せだった時代に比べ、人材的にも厚みを増したNPOが、住民の共感や協力を得ながら活動することで、地域全体の公共精神が高まり、地域社会の豊かさはさらに増すはずです。
 肩書き・タテ割り・ステレオタイプ社会を脱し、“官民融合”することで、NPOは、あらゆるセクターを超えた公共の重要な戦力へと成長するのではないかと期待しています。

 

(3)地域主権に不可欠なNPOのエンパワメント
 地方分権が今後さらに進むことが予想されますが、行政間(中央政府→自治体)の権限移譲という行政内部改革にとどまっていては、地域社会の主役が置き去りとなってしまいます。
重要なことは、住民やNPOが地域の主役として活動し、地域社会の課題を解決するとともに、自己実現を果たしていくような、真の地域主権です。行政の役割は、こうした活動のオーソライズや関係機関との調整など、民間には担い得ない部分を中心とすべきです。
その際、自治体は、上からのルール(国の法令や補助金)に忠実に基づいて業務を執行することよりも、現実的かつ具体的なアイディアや苦悩の宝庫である地域現場をベースとして、構想力・創造力を駆使して現場に見合ったローカルルールをつくることに腐心すべきです。
 こうした公共領域のイノベーションは、現場から起こるのであって、中央主導で全国一律に起こすことはできません。
 21世紀の地域主権時代の日本では、NPOなどの住民活動が地域の第一の主役となり、公務員は、その現場感覚をとことん共有し、NPOと一体となってボトムアップ的にイノベーションを生んでいくことに期待したいです。
 ただ最近、NPOの方が、公務員とは「言葉が通じない」と言うのを耳にすることがあります。「想いが通じない」というより、官民のルール運用や組織原理の違いを乗り越えることができないという意味だと思います。
 こんな状況では、とてもじゃないが、官民一体となって心豊かな地域をつくっていくことはできません。
 ここにも、公務員が地域に飛び出し、現場の想いを共通言語化する力を体得する必要性がありそうです。

 以上が私が考える『飛び出すネット』の主な意義です。(他にも色々ありますが。)
 職場によっては、公務員が“公務”以外の地域活動に関わることへの理解がまだまだ十分でないところもあるようですが、こうしてネットワーク的に横の連携を深めるとともに、それぞれの地域において公務員が飛び出すことの有用性が住民から認められるようになれば、多くの職場で理解してもらえるものと期待しています。
 官も民もない、豊かな公共を実現するには、「制度」も重要ですが、同時に、一人ひとりの公務員、ひいては国民の意識や行動様式の変革も必要であり、そのためには人の心を動かす「運動」がさらに重要です。人の心を動かすのも、また人の心と行動です。
 とにもかくにも、地域社会を元気にしていくための“公務員の大運動”を展開していきたいと思います。
 公務員が変われば、日本が変わる、と信じて。


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